在宅介護が増えつつある背景には、「要介護者が自宅で過ごすことを望んでいる」という理由が目立つ。しかし、バリアフリーに対応していない一般住宅の場合は、在宅での介助作業は決して容易ではない。また、介護に従事することになる家族が抱える負担も非常に大きくなってしまう。そのため、在宅介護では、要介護者とその家族との間のトラブルがあとを絶たない。
要介護度が高い方の在宅介護では、24時間365日、家族は片時も目を離すことができなくなってしまう。特に自力での歩行が困難な要介護者に対しては、つきっきりでいなければならず、排泄介助や車椅子への移乗など、家族が抱える心身の負担は計り知れない。そのため、仲睦まじい夫婦や親子が介護によって険悪な雰囲気になってしまうことも珍しくはないのだ。
しかも、在宅介護は介護する家族だけではなく、要介護者にとっても決して最善な状況ではない場合もある。要介護者が在宅介護を望むのは赤の他人である介護士に自分の身体を触られたり、プライバシーに踏み込まれるのが嫌だという理由が一番に挙げられるが、家族は介護の素人なので、質の高い介護はできない。しかも、リラックスして暮らすことができる自宅が介助作業には適していない場合もあり、思わぬ事故に遭う危険もある。
したがって、安全かつ快適な暮らしを営むためには、介護施設の利用も視野に入れておいたほうが良いだろう。介護で大切なことは、要介護者の尊厳を守りつつ、その家族の負担も軽減することだ。そのため、在宅介護にとらわれることなく、状況に応じた選択肢を用意しておくようにしてほしい。